【知らないと損をする】看護師による、介護保険講座
私は看護師としてそこそこの経験を経て、さらなるスキルアップを目指そうと考えたましたが、とくに興味がある分野もありませんでした。
そこで「自分の苦手を克服する」という形でのスキルアップを図ることにしました。
私の苦手な領域、それは「退院支援」です。
介護保険などの社会資源についての知識がほとんどなく、退院支援を行うことに困難を覚えていました。
そこで、介護支援専門員(ケアマネージャ)の資格を取得しました。
勉強を通じ、今後の自分の人生や、また家族に対しても有益であろう大切な知識を多く得ることができました。
今回は介護保険制度に焦点を当てて、解説したいと思います。
日本は「超高齢化社会」
現在の日本は、65歳以上が人口全体の29.1%を占めており、超高齢社会です。さらに、2025年には団塊の世代800万人全員が75歳以上になります。
今後介護保険制度需要は高まることは必至です。
- 我が国の総人口は、令和2(2020)年10月1日現在、1億2,571万人。
- 65歳以上人口は、3,619万人。総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は28.8%。
- 「65歳~74歳人口」は1,747万人、総人口に占める割合は13.9%。「75歳以上人口」は1,872万人、総人口に占める割合は14.9%で、65歳~74歳人口を上回っている。
- 令和47(2065)年には、約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上。
引用:内閣府
介護保険制度とは
介護保険制度は、全国の市町村と東京23区を制度の運営主体(保険者)とし、保険料と税金で運営されています。
40歳になると介護保険に加入が義務付けられ、保険料を納付することになります。
40歳から64歳までは加入している健康保険と一緒に徴収されます。(会社勤めの方は健康保険料と一緒に給料から天引きされています)
65歳以上の方は原則年金からの天引きになります。
40歳以上の方は、加齢や病気により介護が必要となった場合、介護保険のサービスを利用することができます。
しかし、40歳から介護保険に加入し、保険料を納付していても、介護保険を利用するには改めて市町村に申請をする必要があります。
病院で働いていると、介護保険のサービスを受ける対象であるにも関わらず、それを知らず家族でヘトヘトになりながら介護をしていた、、、というご家庭をちらほら見かけます。
介護保険、障害年金等の社会資源は、基本的に自ら申請をしないと受けられないものが大多数です。
そのためにも社会資源についての知識をあらかじめ備えておくことは、今後の人生においてとても重要なことなのです。
介護保険の対象者
介護保険の被保険者は、第1号被保険者と第2号被保険者の2種類があります。
対象 | |
第1号被保険者 | 65歳以上の者 |
第2号被保険者 | 40歳~64歳のうち、厚生労働省が定める特定の16疾病の診断がついている者 特定疾病 ・末期がん ・関節リウマチ ・筋萎縮性側索硬化症 ・後縦靱帯骨化症 ・骨折を伴う骨粗鬆症 ・初老期における認知症 ・進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病 ・脊髄小脳変性症 ・脊柱管狭窄症 ・早老症 ・多系統萎縮症 ・糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症 ・脳血管疾患 ・閉塞性動脈硬化症 ・慢性閉塞性肺疾患 ・変形性関節症(両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う) |
上記に該当する人は、市町村の窓口に介護保険の利用を申請することができます。
介護保険の認定を受けるまでの流れ
前述した、被保険者に該当する方は、まず市町村の窓口に申請に行きます。
具体的には、市役所の介護保険課や、近隣の地域包括支援センターなどです。
申請からの流れを、以下の図にまとめました。
しかし、申請をしたからといって誰でも介護保険サービスができるわけではありません。
介護保険はあくまで「介護の保険」。介護を必要とする人のための保険なのです。
そこで、介護が必要かどうかの調査が行われます。
これを「認定調査」といいます。
市役所の職員が自宅などに訪問し、既定の調査票の項目に沿って実施されます。
また、認定調査に加え、医師によって記載される「主治医意見書」というものがあります。
被保険者の病状や、利用した方がいいと思われるサービスなどを、主治医が記載します。
「認定調査」と「主治医意見書」の結果を合わせて、一次判定(コンピュータ)、二次判定(介護認定審査会)が実施されます。
その結果、非該当、要支援1~2、要介護1~5のいずれかに判定され、市から通知が来ます。
ここまでで最低約1か月かかるとされています。
どんなサービスが受けられるの?
介護保険の認定を受けると、介護保険のサービスが利用できるようになります。
サービスの種類は大きく2つに分かれます。
①居宅サービス
(1)訪問サービス
(2)通所サービス
(3)短期入所サービス
②施設サービス
①居宅サービス
(1)訪問サービス
事業者が自宅に訪問してくる形で受けるサービスです。
主なサービスは以下の通りです。
・訪問介護(ヘルパー)
・訪問看護
・訪問リハビリ
・居宅療養管理指導(薬剤師、歯科医師などが自宅を訪問)
・訪問入浴
(2)通所サービス
自宅で生活しながら施設に通って利用するサービスです。
主なサービスは以下の通りです。
・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリ(デイケア)
(3)短期入所サービス
期間限定で施設に宿泊する、ショートステイといわれるサービスです。
②施設サービス
「特別養護老人ホーム(特養)」「介護老人保健施設(老健)」「介護医療院」に入所した要介護者に対して提供されるサービスです
その他、住宅改修や福祉用具貸与など、様々なサービスを受けることができます。
サービス内容の詳細については厚生労働省のホームページでわかりやすくまとめられていました。
厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索」
これらのサービスを組み合わせ、要介護者の介護ニーズの充足を図ります。
費用は?
サービスを利用するとその分費用が掛かりますが、介護保険料と国・自治体からの財源によって、
1割~3割の自己負担で受けられます。
介護度(要支援1~2、要介護1~5)によって支給限度額が設定されており、それを超えた分の利用額は10割負担となるで注意が必要です。
(支給限度額については健康長寿ネットでわかりやすくまとめられていました。)
しかし、要介護者やその家族が、支給限度額内でおさまるよう計算しながらサービスを組むことは困難です。
そこで、ケアマネージャ(介護支援専門員)という、介護保険のプロがケアのプランニングを行います。
介護保険サービスの利用にはケアマネージャの存在が必須です。
さいごに
目の前の患者さんが、介護的な問題で困っておられても、知識がなければ提案することすらできません。
ケアマネージャの資格を取得し、介護保険についての知識を得たことで、自らの行う看護の質が上がったように感じています。
高齢者と関わる機会の多い看護師が、介護保険をはじめとする、社会資源についての知識をもつことは、とても有効なことだと思います。
また、この知識は今後の自分や家族の人生においても生かせることは間違いないでしょう。
「看護師のお話」のカテゴリで、他にも看護師関連の投稿をさせていただいてますので、ぜひご覧ください♪
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